「クマ」とは、目の下に感じる思わしくない状態(老けて見える・疲れて見える・寝不足に見えるなど)の総称であり、その原因は様々です。
「クマがある」と感じさせる主な原因は下図の通りです。
この他にも多数の原因があり、どれか一つではなく複数の原因が絡み合って「クマ」が構成されています。
①皮膚の色や性質は手術では根本的に改善させることができませんが、②~⑤のような立体感の乱れは手術で改善させることができます。
言葉だけではわかりづらいので、実際に写真をご覧ください。
こちらの4名の方々は、全員「クマを取りたい」というご希望でご来院されました。目の下の状態は全員同じでしょうか?お一人ごとに全く異なりますね。
クマの主な原因は、それぞれ
A…膨らみ B…凹み(ボリューム不足) C…凹み(溝) D…たるみ です。
クマが特定の原因から成り立っているのではない。ということが分かります。
「クマ」とひと言で言っても、その原因は人によって違う!
次に、治療方法についてのお話です。
テレビCMやネット広告で有名な「クマ取り」とは、経結膜脱脂術(脱脂)という手術のことですが、目玉を包み込むクッションの役割がある眼窩脂肪という脂肪が飛び出ている部分を摘出する、最も単純な手術方法です。
良くも悪くも脂肪を減量するだけの手術ですので、Aのように何となく膨らみが目立つタイプのクマにはそれなりに有効ですが、B~Dのように凹み要素や皮膚のたるみが目立つタイプのクマには不向きです。クマがあまり改善しないばかりか、場合によっては悪化して感じることもあります。
そういった意味では、脱脂は「膨らみ取り」であって「クマ取り」ではありません。「広告で見かけたから」とか、「友人が脱脂で綺麗になったから」という理由で安易に手術を受けるのは要注意です。
膨らみを改善する脱脂手術があるのと同様に、B~Dの原因を改善する手術がそれぞれ存在します。
4名とも治療方法は異なりますが、クマが改善したという結果は共通しています。クマに見える原因を的確に見極め、各々の原因を改善できる治療方法を選択する必要があるのです。
「クマ取り=脱脂」ではない!原因に応じた治療方法を選ぶべし!
それでは、ここから各手術方法について解説します。
少し専門的な内容も出てきますので、全てをご理解いただかなくても結構です。
少なくとも、これまで解説した内容だけは頭に入れておいていただきたいと思います。
→ 「クマがあるから」という理由で全員同じ治療をするのではない
あまりよく分からないからドクターやクリニックに全てお任せ!というのは良くありません。
下まぶたの裏側の粘膜(結膜)を切開し、膨らみ(目袋)の原因となっている眼窩脂肪を摘出する手術です。眼窩脂肪は、眼窩隔膜という袋に包まれ、3つの区画(コンパートメント)に分かれており、各区画から過不足なく脂肪を摘出します。
脂肪を包んでいる隔膜を切って中身を摘出するだけの最も単純な手術ですので、改善するのは膨らみだけです。クマに見える他の原因、すなわち凹みや溝、皮膚のたるみなどはそのまま残ります。
クマのほとんどは、膨らみだけでなく他の原因が併存しているため、脱脂と脂肪注入を併せて行うか、別の手術方法を選択した方が、より良い仕上がりとなります。
とは言え、適応を見極めた上で適切な量を脱脂すれば、クマを改善させることができます。術後の腫れや内出血が軽度であることもメリットです。
手術時間 | 約15~30分 |
---|---|
麻酔 | 局所麻酔、静脈麻酔(オプション) |
術後通院 | 1~数回 |
術後の症状 | 腫れ、内出血、目ヤニ、異物感などが出現します。 術後2~3日までが腫れのピークで、1~2週間程度で概ね改善します。 |
リスク | 膨らみの残存、凹み、左右差など |
日常生活制限 | 洗顔・メイク・シャワーは翌日から可能 入浴・飲酒・運動は腫れのピークが過ぎてから可能 |
脱脂をお受けになる際は、眼窩脂肪の取り過ぎだけは要注意です。取り過ぎると、下まぶたの窪みだけでなく上まぶたの窪み(窪み目)や眼球の後退(奥目)を誘発し、むしろ老化を促進することとなります。
もし脱脂をするのであれば、眼窩(目回りの骨の窪み)からはみ出してしまった部分だけを摘出すべきです。万が一脱脂量が少なくて膨らみが残ってしまった場合には追加摘出は容易にできますが、取り過ぎてしまった場合には元の状態に戻すことができません。
眼窩脂肪は、目玉を守るための大切な“クッション素材”として存在しており、不要なものではありません。大切な脂肪を摘出せずにクマが治ればそれに越したことはないわけで、そういった意味でも、脱脂せず眼窩隔膜を再建してクマを治すハムラ法(後述)は理に適った優れた手術方法と考えています。
当院では、脱脂後に生じてしまった窪み目に対する注入治療も多く行っています。脱脂後の窪み目だけでなく、加齢性の窪み目も同様に治療が可能です。まぶたの注入治療は凹凸になりやすく大変難しいのですが、自然な仕上がりでご好評をいただいています。
ご自身の脂肪を太もも(またはお腹)から少量吸引採取し、不純物を除去して精製した「コンデンスリッチファット(CRF)」を使用します。皮膚が薄い目元には、CRFをさらに細かく加工した「シルキーファット」という脂肪を注入し、滑らかに整えます。
膨らみと凹み(痩せ)が混在しているクマには、経結膜脱脂術と同時に脂肪注入を行います。膨らみが目立たない場合や、脱脂後の凹みの修正には、脂肪注入を単独で行うこともあります。
脂肪注入は、目の下だけでなく、ご希望に応じて他の部位への注入を同時に行うこともできます(頬・額・こめかみ・ほうれい線など)。
脂肪注入の詳細については、こちらをご覧ください。
手術時間 | 約30~60分 |
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麻酔 | 局所麻酔、静脈麻酔(オプション) |
術後通院 | 1~数回 |
術後の症状 | 腫れ、内出血、違和感などが出現します。 術後2~3日までが腫れのピークで、1~2週間程度で概ね改善します。 |
リスク | 凹み、膨らみ、しこり、左右差など |
日常生活制限 | 洗顔・メイク・シャワーは翌日から可能 入浴・飲酒・運動は腫れのピークが過ぎてから可能 |
下まぶたの裏側を切開するのは、経結膜脱脂術(脱脂)と同様です。脱脂では健常な眼窩脂肪を摘出して捨ててしまいますが、裏ハムラ法では脂肪(凸)を捨てずに溝(凹)へ移動することで、凹凸を効率的に改善させることができます。
溝は強固な靭帯によって皮膚が骨側に引き込まれて生じているので、この繋がりを確実にリリースして凹みを浮かせ、そこへ眼窩脂肪を滑り込ませるように縫合することで滑らかにします。また、眼窩脂肪が膨らんでいるということは脂肪を包んでいる袋(眼窩隔膜)も緩んでいるわけで、袋をピンと張った状態で固定し、クマの再発を予防します。
脂肪を捨てるのみで靭帯や隔膜の操作を一切行わない脱脂と比べると、結果に差が出て然りということになります。
ただし、裏ハムラ法も万能ではありません。極端に痩せている場合には注入治療が、皮膚のたるみが強い場合には後述の表ハムラ法が適応となります。
裏ハムラ法は、まぶたの裏側からの狭い視野で難しい組織操作を確実に行わなければならず、執刀医の知識と経験とセンスが問われる難易度の高い手術です。同じ手術名でも、執刀医によって内容は千差万別です。中には、裏ハムラ法と銘打っているのに脱脂と同等の操作しかしていない悪質なケースもあるようですので、執刀医選びは慎重に行ってください。
手術時間 | 約1時間 |
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麻酔 | 局所麻酔、静脈麻酔(推奨) |
術後通院 | 1~数回 |
術後の症状 | 腫れ、内出血、目ヤニ、異物感などが出現します。 術後2~3日までが腫れのピークで、1~2週間程度で概ね改善します。 |
リスク | 凹凸、左右差、三白眼、内外反など |
日常生活制限 | 洗顔・メイク・シャワーは翌日から可能 入浴・飲酒・運動は腫れのピークが過ぎてから可能 |
経結膜脱脂術や裏ハムラ法は皮膚を切開しない手術のため、皮膚自体のたるみが強い場合には、術後に深いシワが残ってしまいます。皮膚のたるみに対しても治療が可能なのが、この表ハムラ法です。
下まぶたのまつ毛の生え際~目尻にかけて皮膚を切開し、靭帯剥離・脂肪移動・隔膜再建などの内部処理を行った後、余分な皮膚を切除して縫い閉じる手術です。
皮膚のたるみ、膨らみ、溝、凹みといったクマの原因のほとんどを改善させることができる非常に優れた手術方法です。
内部処理のコンセプトは裏ハムラ法とほぼ同様ですが、視野が広い分、より広範囲に確実な処理ができますし、ご希望によっては頬のリフトアップ(ミッドフェイスリフト/中顔面リフト)を同時に行うこともできます。
皮膚を切開すると言うと、傷あとを心配され二の足を踏む方も多くいらっしゃいますが、ほぼ分からないほどに美しく仕上がります。内部処理だけでなく、皮膚縫合にも形成外科的技術を駆使します。私の症例写真をご覧になれば、こだわりをお感じいただけるかと思います。
手術時間 | 約2時間 |
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麻酔 | 局所麻酔、静脈麻酔(推奨) |
術後通院 | 2~数回 術後5日~1週間で抜糸します。 |
術後の症状 | 腫れ、内出血、違和感などが出現します。 術後3~5日までが腫れのピークで、1~2週間程度で概ね改善します。 |
リスク | 凹凸、左右差、知覚異常、三白眼、外反、傷あとなど |
日常生活制限 | 洗顔・メイク・シャワーは翌日から可能(目元のメイクは抜糸翌日から可能) 入浴・飲酒・運動は腫れのピークが過ぎてから可能 |
繰り返しになりますが、クマというのは何か特定の原因で成り立っているものではなく、クマの原因もまぶたの組織の状態も人によって全く異なります。同じ手術で全員のクマが治るという訳ではありません。
クマを綺麗に治すには、クマの原因を正確に分析することと、それに対して最適な治療方法を選ぶことが大切です。
クマの主な原因とそれぞれの手術で得られる効果の対応表を作成してみました。全てが正確に当てはまるものではありませんが、判断の一助になるかと思います。ご参考になれば幸いです。
横軸で見ていただくと、例えば
裏ハムラ法…
膨らみと溝を治せるが、皮膚のたるみは治せない
(「表」ハムラ法ならたるみを治せる)
という意味合いになります。
凹みの改善として、前述の脂肪注入以外に、ベビーコラーゲンやヒアルロン酸の注入も行っております。ダウンタイムをほとんど気にすることなく、即時的に効果を発揮します。
膨らみの改善は手術でしか得られませんが、膨らみよりも凹みが目立つ場合や、脱脂術後に窪んでしまったという場合は、注入治療の適応となります。
ベビーコラーゲンは、肌馴染みが非常に良いため、皮膚が薄く凹凸を生じやすい下まぶたでも、ごく自然に凹みや小ジワを改善させることができます。(ベビーコラーゲンについてはこちら)
皮膚表面の凹凸を細やかに改善するベビーコラーゲンに対し、ヒアルロン酸は適切なボリュームを加えることでふっくらとした美しい立体感をもたらします。涙袋形成、頬こけの改善などに適した治療方法です。(ヒアルロン酸についてはこちら)
下まぶたの皮膚は非常に薄く、小ジワやちりめんジワが目立ちやすい部位です。これらのシワは肌質の劣化(皮膚の保水性や弾性の低下など)が主な原因ですので、肌質を改善するスネコス注射が効果的です。クマの手術後のメンテナンスとしても推奨しています。表情をコントロールするボトックスや引き締め効果のある照射治療なども良いでしょう。(スネコスについてはこちら)
経結膜脱脂術 | ¥275,000 |
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経結膜脱脂術+脂肪注入 | ¥495,000 |
裏ハムラ法 | ¥495,000 |
裏ハムラ法+脂肪注入 | ¥715,000 |
表ハムラ法 | ¥605,000 |
表ハムラ法+ミッドフェイスリフト | ¥770,000 |
下眼瞼皮膚切除術 | ¥330,000 |
下眼瞼皮膚切除術+眼窩脂肪切除 | ¥385,000 |
下眼瞼皮膚切除術+脂肪注入 | ¥550,000 |
他院術後修正 | ご相談ください |
静脈麻酔 | ¥55,000 |
当クリニックの手術料金には、手術に必要な局所麻酔薬・機器・針や糸、内服薬・外用薬などが含まれています。
A. 可能です。クマは、加齢以外に遺伝的要素も関与しており、子供の頃から気にされている方もいらっしゃいます。お若い時に手術を受けても将来的な不都合は生じませんので、気になったらお気軽にご相談ください。
A. 皮膚や脂肪など組織の状態が良いうちに手術をした方が整いやすいですし、クマに悩んだまま過ごすよりもクマが治ったという喜びと共に明るく人生を歩んだ方が精神衛生上も良いでしょう。逆に、手術を先延ばしにするメリットはあまりないかと思います。ただし、手術の適応があれば、の話です。「手術の適応がないのに将来クマができるのを予防するために脱脂をする」というのは論理が破綻しています。
A. 手術を受けて完全にクマが無くなったとしても、老化現象を止めることはできません。年齢を重ねれば、皮膚はたるみ、脂肪は痩せて下がり、骨格も変形していく…老化に伴った形態変化はゆっくりと進行します。もちろん、手術の効果は非常に大きく、長期的ですが、永続的という魔法の言葉で括られるのは私としては違和感があります。後戻りという意味での再発はしませんが、老化進行という意味ではまたクマが出てきたと感じることがあるかも知れません、とお答えしています。
A. 脱脂や裏ハムラ法は、皮膚を切らずに眼窩脂肪を除去あるいは移動する手術ですので、皮下の凹凸が改善しても、たるんだ(面積が増えた)皮膚はそのまま残ります。たるみが強い場合には、表ハムラ法など皮膚を切除する手術が第一選択とはなりますが、皮膚切開に抵抗があれば無理におすすめすることはありません。クマの状態だけで治療を決めるのではなく、皆様のご希望も加味して最良の治療方法をご案内します。
A. 可能です。脱脂は流行している手術ですので、適応外の手術やクオリティの低い手術によるトラブルの相談が急増しています。初回治療だけでなく修正も多く行っていますので、お気軽にご相談ください。
A. 靭帯や眼輪筋骨付着部を剥離するので、たるみというデメリットを指摘するドクターもいるようですが、論文で否定されています。適切な処理を行えば問題ありません。ご安心ください。
A. 局所麻酔でも手術は可能ですが、眼窩脂肪の操作は局所麻酔のみでは痛みを抑え切れない場合もあり、またハムラ法などは時間もかかりますので、静脈麻酔を推奨しています。無意識の状態で手術を行いますので、痛みは感じません。ご安心ください。
A. 手術翌日から洗顔、メイク、シャワーが可能です。
A. 腫れのピークが過ぎるまでの3日間程度は避けてください。アルコール摂取や運動、長風呂は血液循環を促進する効果があり、腫れや違和感が強くなったり長引いたりする恐れがありますので、様子を見ながら少しずつ再開してください。
A. 違和感や目ヤニがある程度落ち着いてから装着してください。数日~1週間程度が目安です。
A. 術後経過には個人差があり、指定はありませんが、デスクワークで術後2~3日目、肉体労働で術後4~5日目からの再開が目安です。